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離島のソリューションが日本を救う?! 宮古島発Utility3.0を考える(後半)

「エコアイランド宣言」を掲げて、分散型エネルギー資源の活用を進める、沖縄県の宮古島市。ここでUtility3.0の世界の創出に取り組む、株式会社ネクステムズ社長の比嘉さんに創業までの経緯や宮古島が取り組む「すまエコプロジェクト」の取り組み、思い描くUtility3.0の姿を伺いました。これから人口減少・過疎化が進み、中山間地域も離島と同じような状況になっていくでしょう。宮古島の取り組みが、日本を救うソリューションの一つになるのかもしれません。

<宮古島のすまエコプロジェクトとは>

竹内:宮古島のすまエコプロジェクトは、私も以前取材して原稿に書かせていただきましたが、「宮古島市全島エネルギーマネジメント(EMS)実証事業」の愛称ですよね。宮古島に供給される電力の原価の半分を設備費が占めており、小規模系統であるため持たなければならないバッファーの幅が大きく負荷率は50%を下回っていることがそもそもの原因だと伺いました。独立グリッドに共通する悩みでしょうが、再生可能エネルギーの普及を進めるためにも、負荷率を向上させる必要があると考えて、エコキュートに着目した訳ですね。

比嘉:はい、その通りです。もう価格ドットコムなどであらゆる需要側機器を検索しました。電気自動車も考えたのですが、宮古島は小さいので1日平均走行距離は15km程度であり、沖縄本島の1日平均走行距離50kmを大きく下回ります。そのため、少なくとも当時の価格ではEVの初期投資をランニングコストのメリットで回収するには非常に長い時間が必要となり、導入のインセンティブは持ちづらいと判断しました。

竹内:ライフスタイルを踏まえて考えることって大事ですよね。エコキュートは貯湯槽という蓄エネ装置を持ちます。この前ご一緒させていただいた講演会でもお話しましたが、実は日本は蓄エネ技術大国で、揚水発電は全国で30GWあります。これは原子力の開発とともに開発されたものですが今は再生可能エネルギーの調整に活躍しています。それ以外にも1990年代後半に導入が進んだ蓄エネ式空調も約1.9GWくらい普及しています。

エコキュートは2018年6月時点で、600万台が普及しています。消費電力が1.5kW程度だとすると、約900万kWの電力の調整が可能ですし、3時間程度で沸きあげとして6M台×1.5kW/台×3h=約27GWhのエネルギーを蓄えることができるわけです。

「すまエコプロジェクト」で得られた知見に基づいて、IOTを活用してエコキュートの稼働を自在にコントロールすることができるようになれば日本の蓄エネ技術の中でもlow-hanging fruitの活用につながるのではないかと期待してみています。

もちろん、既設の設備のコントロールなどは簡単にはできませんし、それ以外にもチャレンジはたくさんあったとは思いますが、比嘉さんが苦労された点というのは?

比嘉:ちゃんとビジネスとして回るもの、外に出して恥ずかしくないシステムを作ろうと思いました。そのためにまず必要なのは、即応性高くコントロールする技術です。人間による制御に頼るのではなく、通信をつなぎ、デジタルにコントロールせねばなりません。しかも、通信制御機器も宅内に置いたのではダメなんです。精密な機器を屋外に置くのはと反対もされましたが、沖縄では住宅が鉄筋コンクリート造であることもあり宅内に通信制御機器を設置するとデータが届かないことも多くありました。それに、住民の方がよく理解しないまま通信制御機器の電源を切ってしまったりすることもあるんですよ(笑)。屋外にも置ける通信制御設備をと思っていたところ、エコーネットライトの技術と出会いました。エコーネットライトは標準プロトコルなので、マルチベンダー方式で機器を接続でき、需要側機器の選定にも価格競争力を発揮できるので、これだと思いました。

<「2050年のエネルギー産業」との出会い>

比嘉:とにかく制御技術を磨こうと思って取り組んできたのですが、肝心の事業化や普及推進については行き詰っていました。2016年末ですよね、竹内さんが初めて宮古島に来てくださったのは。その時にすぐ「マネタイズはどうするのか?」と言われて、グサッと(笑)。事業として成立させたいと言いつつ、そこが十分ではなかったと気づき、あれこれ考えました。でもいいアイディアが出ない。そんな時、2017年の9月に「2050年のエネルギー産業」が出た訳ですよ。あの本は、自分が描いてきた世界をトータルで言語化してくれていましたし、世の中がモノを持たなくなるというという記述にハッとしました。それで、分散型の機器もリースでやってみよう、そこから発展して今は第三者所有モデルにたどり着いた訳です。この2年くらいは、事業化することをとにかく考え続けてきました。

竹内:あらあら・・。またグサッとやっちゃったんですね、私(笑)。でも、宮古島に初めて伺ったときから、このプロジェクトは絶対成功してほしいし、成功させなければ日本のUtility3.0は成立しないとも思っていました。

 確かにマネタイズすることがまだできてはいないと思ったのは覚えていますが、私が特にこれは良いと思ったのは、誰かすごく損する人が出るとか、そういうことにはしていないことなんです。地域のエネルギー転換といったときに起こりがちなのが、既存のエネルギー事業者の方たちとの衝突です。温暖化の世界では、「気候変動の正義」を掲げて従来型のエネルギー事業を「恐竜」、あるいは「滅びゆく者」と言って憚らない風潮があります。でもそんな対立構造を生み出していたら、世の中を変えることはできません。比嘉さんは、地域のプロパン事業者さんたちにも「一緒にやろう」と呼び掛けていると伺って、これだと思いました。

比嘉: はい、仰る通りで最初エコキュートの導入をやろうということになった時にはものすごい反発がありました。それは当然です。でも、ガスボンベとガス給湯器を届けていた人たちが、太陽光とエコキュートを届ける、その事業に参画いただけるのであれば誰も排除しないということを1社1社訪ね歩いて、丁寧に説明しました。当時13社あったガス事業者の人たちは総論OKと言ってくれました。「10年後までプロパンガス事業を継続するのは厳しいと思っていた」、「蓄電池が安くなって普及したらプロパンガスは一瞬で終わる」といった言葉も聞かれて、皆さんそれぞれに危機感を持っておられたこともわかりました。

竹内:先ほどの再生可能エネルギーの導入には「痛み分け」が大事といった言葉からも感じたんですが、沖縄の人の優しさと言うか、知恵なのかもしれないと思いました。喜びも苦しみも分け合うという文化があるんですかね。

比嘉:なるほど、それはそうかもしれません。そう言って頂けると嬉しいですね。

<実現したいUtility3.0の姿>

竹内:今後取り組みたいことは?

比嘉:沖縄がエネルギーで困らないようにしたいし、沖縄のエネルギー構造を良くしたい。それは変わりません。そのために、太陽光と蓄電池、それにプラスアルファでエコキュートや電気自動車といった分散型のエネルギー資源を活用して貢献していきたいと思っています。

でも繰り返しになりますが、分散型エネルギー資源の導入が目的ではないんです。例えばいま、太陽光については設置したはいいもののメンテナンスしてもらえなくてほったらかしという案件がほとんどで、地元の人たちは強い不満を持っています。できればプロパン事業者さんのような地域のエネルギーに関わってきた方たちも巻き込んで、第三者所有形式をとれば、責任ある事業者が長い付き合いをすることになります。ちゃんとメンテナンスして資産価値を維持し、そのための雇用も生む事業者であれば、地元は評価してくれると思うんです。

竹内:なるほど。太陽光発電事業のリブランディングですね。それは沖縄だけでなく、全国で同じような状況だと思います。メンテナンスフリーという売り言葉ばかりが先行して、結局資産価値を維持できていない案件が多いです。そうなると社会の皆さんのマインドが「なんだ、太陽光って迷惑施設か」となりつつあります。

比嘉:でもこれから離島のエネルギーを考えたら、燃料を必要としない分散型エネルギー源はどうあっても増やしていかなければならないと思います。例えば、これまでは手段がないので、多くの離島に海底ケーブルを敷設し、電力供給をしてきました、その張替えには億単位のお金がかかります。でも住民が2人とか3人といった離島へのケーブルも本当に全て張替をしなければならないか。社会として見極めが大事だと思っています。

竹内:本当に地方におけるエネルギーインフラ投資の選択と集中は喫緊の課題ですよね。分散型で賄えるところ、その方が全体コストを抑えられるところでは、どんどん分散型エネルギー資源の活用を進めるべきでしょう。何が課題ですか?

比嘉:やはり導入コストをどこまで抑えられるかが大きなチャレンジで、その試算は何度も繰り返しやっています。ただ、沖縄の平らな鉄筋コンクリート住宅・低傾斜角度の家であれば足場を組まずに太陽光発電を載せられますし、低傾斜角度にすることで鋼材量を減らし、方位依存度も下げ、かなりコストを抑えられます。加えて、インバーターを太陽光と共有するハイブリッド型蓄電池にすれば、相当コスト競争力は持てると思っています。

 加えて最近の分析で、同じ容量の太陽光発電でも場所によって発電出力に極端な差があったんです。状況を確認すると、電圧上昇抑制の有無が大きく関係していることがわかりました。分散型エネルギー資源の大量普及のためには、自家消費率を高めながら、有効電力だけでなく、無効電力の制御もしなければならないということを強く感じました。、蓄電池併設で進みや遅れの無効電力制御も可能となれば、配電線路の電圧制御も分散型エネルギー資源で自在になるはずです。そのため、蓄電池併設型のスマートインバーターの開発と普及が肝になると考えています。

竹内:やらなければならないことは多いですね!今は離島の課題解決かもしれませんが、今後日本の本州も徐々に、「離島の集合体」といった状況になるでしょう。ぜひ今の時点で宮古島からUtility3.0の世界を作ってください。