創業者ブログ Blog

ホーム/創業者ブログ/【記事解説】朝日新聞の容量市場に関する記事について

【記事解説】朝日新聞の容量市場に関する記事について

戸田 直樹:U3イノベーションズ アドバイサー/Utility3.0共著者

      東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所

容量市場の第1回メインオークションについて、9月28日付の朝日新聞朝刊に「電力、想定外の国民負担1.6兆円」と題する記事が載りました。

結論から申し上げると、この記事のタイトルは間違っています。

拙著『エネルギー産業の2050年 Utility3.0へのゲームチェンジ』では、電気のもつ3つの価値、すなわちkWh、kW、⊿kWについて説明していますが、 容量市場はそのうちkW価値の対価と対価を支払う対象を決める市場です。今般のオークションの約定総額の1.6兆円は、電力供給コスト全体の中で、kW価値を提供する対価の総額が1.6兆円という意味です。これは電力供給コストの内訳が明確化されたものであって、1.6兆円の新たな国民負担が生じるわけではありません。

当該記事には「平均家庭 月500円相当」とも書かれていますが、これも例えば「新聞の月極購読料4,900円のうち、500円は新聞社が印刷会社に支払う費用相当である」という意味で、新聞代が月500円値上がりするという意味ではありません。

もっとも、容量市場導入の目的は、kW価値提供のための対価を明確化し、その負担の在り方を適正化することなので、今までkW価値を十分負担してこなかった小売電気事業者については電気料金が上昇する可能性はあります。しかし、これは適正化の結果です。 安定供給の価値は、消費者が等しく裨益するものであり、kW価値を負担する小売電気事業者と契約する消費者が、そうでない事業者と契約する消費者の間にコスト負担の不公平が生じていたことは是正されるべきで、それが容量市場の意義です。

残念ながらSNS上では、この記事を参照して「1.6兆円がまるまる新たな国民負担であり、2024年度から平均家庭で月500円相当の電気料金の値上げが全国的に行われる」と誤解したコメントが散見されます。

このようなミスリーディングな報道は、要らぬ混乱を招くだけ、再エネへのエネルギー転換に向けた建設的な議論を妨げるだけです。正確な報道を強く希望します。

ちなみに、容量市場を導入したことで、電力供給コスト全体に影響がある可能性はありますが、それはプラスの影響もマイナスの影響もあり得ます。例えば、容量市場の調達目標量算出の基となる電力需要想定が過大になれば、容量市場の調達量が過大となってコストは増えます。他方、kW価値が明確になったことで、デマンドレスポンスの価値が明確化され、電力システム全体の効率化に資するデマンドレスポンスの導入が促進されれば、コストは削減されます。

いずれにせよ、1.6兆円がまるまる新たな国民負担になるわけではありません。