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どうする 地方のエネルギー問題

「SS(ガソリンスタンド)過疎地」という言葉自体は、皆さんご存知でしょうか。

経済産業省・資源エネルギー庁が公表している「SS過疎地対策ハンドブック」は、自家用車や農機具への給油だけでなく、高齢者への灯油配送にも支障をきたすとして、ガソリン需要の減少や後継者難でSSが減少し続けている現状に強い危機感を示しています。

基本的に市町村内のSS数が3か所以下の場合に、「SS過疎地市町村」と定義されるようですが、隣接自治体に多くのSSが存在するようであれば特に不便はないという場合もあります。そのため政府は、「SS立地情報把握システム」を構築して、「最寄りのSSまでの道路距離が 15km 以上離れている住民が所在する市町村」も把握するようになりました。このようにして抽出された「SS過疎地」は現在全国で約300か所、自治体の中に1軒もSSが無いという自治体も全国で12か所あるとされています(平成29年3月末時点登録データ)。

SSを維持するために地方自治体がその経営を引き取る公営SSや、地域住民が共同出資会社を設立してSSを運営するなどの事例もあります。地方に住む方のエネルギーアクセスは重要な課題ですから、こうした対処が求められることも理解できます。しかし今後人口減少・過疎化が加速度的に進むことは不可避であり、民間事業として成立しないものを公営にするという対処には限度があるでしょう。問題を根本から考えるべきではないでしょうか。

そもそも「エネルギー事業」を供給事業者の規模によって分類すると、一般的に最も小さいのがSS、次いでLPガス事業、都市ガス事業、最も大きいのが電力ということになるでしょう。都市ガスはそもそも人口や産業密度の高い地域に導管を延ばして供給するという事業モデルであり、その供給エリアは国土の6%程度です。

出典)平成28年9月 一般社団法人日本ガス協会「都市ガス事業者の現状」

これまで多くの地域は電力+LPガス/ 灯油+SSによってエネルギーへのアクセスを確保してきた訳ですが、SSがこのまま減少し、もしLPガス事業も縮小していった場合には、最後に残るエネルギーインフラは電気ということになるでしょう。「エネルギー産業の2050年 Utility3.0へのゲームチェンジ」では、人口減少・過疎化によって、特に送配電事業の持続が困難になることを書きましたが、電気は光や動力、熱、情報などあらゆる価値を提供できる汎用性の広い財であることから、地方のエネルギーは電気に集約していくということも考えられるのではないでしょうか。

温暖化の文脈から、これから電化が進むことは明らかですが、地方のエネルギーインフラを全て維持することの社会的コストを考えると、その観点からも電化を進めていくべきではないかと考えています。 もしそれを前提とするのであれば、今行っているような、すべてのエネルギーインフラを維持するような政策ではなく、例えばガソリン・軽自動車から電気自動車への買い替えや暖房器具の電化に補助金を出して、電化を進めることなどで、その不便を解消していくことも考えるべきではないでしょうか?

こうした地域の生活や雇用にも影響する話は、効率性の観点からだけでは語れません。SSを「総合生活サービスの拠点」にして買い物や行政サービスの拠点として活用することで、さらなる地域住民福祉向上を図るということも一案でしょうし、解決策が電化だけだとは思いません。

ただ、大切なのは、これまでのやり方で既存のインフラを維持するのはもう無理だと認めるということです。それを最初の一歩として、ではどうするのかを考えることが、今の日本が直面する喫緊の課題だと思っています。