先日、とある農業関係のシンポジウムに参加したところ、知り合いの雑誌編集者の方とバッタリお会いしました。温暖化やエネルギー分野と直接的には関係の無い農業関係のイベントに私が参加していたことに驚かれたご様子だったので、今回のblogは私たちU3イノベーションズの農業分野に対する関心について。実はこの分野への関心が高じて、「農業電化協会」に加盟してしまいました。創業して最初に加盟した団体が「農業電化協会」だったことは自分たちにとっても意外ではありましたが、ただ、創業前から農業分野とエネルギー分野で何か掛け算ができないか、というのは大きなテーマだったのです。
関心を持ったきっかけはとても単純で、日本は山がちで平地が限られていること、その限られた平地を有効に使うためには、農業とエネルギー産業で土地をシェアすることが必要ではないかと思ったことでした。再生可能エネルギーは、エネルギー密度がとても低いので、広大な土地が必要です。
日本の太陽光発電のコストは、今でも諸外国の倍以上ですが、土地の造成費がかかることも要因の一つとして挙げられています。住宅や工場の屋根、農地などあらゆるスペースを有効活用して、コストを抑えた太陽光発電を実現していくことが必要です。
また、農業は意外にエネルギーを使う事業でもあります。トラクターや耕運機など農業機械の多くは軽油やガソリンなど化石燃料を使用しますし、農業施設を造れば温度調節や水循環にエネルギーの投入が必要です。そうしたエネルギーをできるだけ安価で提供することができれば、日本の農業の競争力を上げることにもなるでしょう。
さらに、農業がおこなわれている地域はこれから人口減少・過疎化が進む地域です。第1回目のblog「どうする 地方のエネルギー問題」でも書いた通り、こうした地域では、ガソリンスタンドの減少が顕著で、LPガス事業も厳しい環境に置かれています。都市ガスはもともと通っていませんので、こうした地域に残るエネルギーインフラは、電力だけになる可能性もあるでしょう。電力事業においても、需要が減少する地域への送電線を維持することは厳しいわけですが、再生可能エネルギーと蓄エネ技術などを活用して自立できる地域を作ることができれば、その負担は無くすことができます。
U3イノベーションズで日本の自治体の農業に関するデータとエネルギーに関するデータを重ねてみたところ、下記のような結果になりました(国立社会保障・人口問題研究所が2045年の人口見通しを試算していない福島県の自治体を除いたデータです)。日本の農業産出額の58%を占める周辺都市(人口5万人未満の都市)は、エネルギーインフラの危機に真っ先に直面するエリアであることが、ガソリンスタンド過疎地の87%が集中していることからも明らかです。その一方で、わが国の太陽光発電の導入実績の36%、賦存量の26%を占める、地域エネルギー資源の宝庫でもあります。
大都市圏では、パネルの軽量化などの技術改良をより進めて屋根置きの太陽光を増やしていくこと、周辺都市では太陽光パネルに日射を遮られた環境で育つ作物の研究を進めたり、安価で安定的な架台の施工技術を習熟させること、農業分野における電化を進め農業とエネルギー産業の融合を図ることなど、日本の太陽光発電を増やすには、一つ一つの課題を丁寧に解決していく必要があります。
掛け声だけでは再生可能エネルギーは増えません。こうした課題の解決に、U3イノベーションズは貢献していきたいと考えています。