前回のblog“エネルギー産業のスタートアップ模様”でも書きましたが、日本でも少しずつエネルギー関係者のエコシステムが豊かに、厚くなりつつあります。とはいえ、社会全体の傾向として起業家精神が高く評価され、また、システム改革や再生可能エネルギー導入において先行する欧州などの方がスタートアップの数が多いのも確かでしょう。
昨年の春、私たちがU3イノベーションズ創業に向けての話し合いを本格化させた頃に、ENECHANGE株式会社さんが企画する「Japan Energy Challenge 2018」への参加にお声掛けをいただきました。自分たちの事業目的は、日本のエネルギー事業に関わる方たちをつなげ、そのエコシステムを豊かにすることだというのは定めていたのですが、日本のエネルギー市場に関心を持っている海外のスタートアップをメインターゲットとするのか、あるいは日本のスタートアップをメインターゲットとするのか、まだ絞り切れていなかった頃でした。
Japan Energy Challengeとは、ENECHANGE株式会社代表取締役会長の城口さんが発案された、欧州のエネルギーテック企業開拓を目的としたアクセラレータープログラムです。昨年7月にロンドンで開催された第1回には、欧州やイスラエルから集められた選りすぐりの10社のスタートアップと、日本のエネルギー企業6社が集まりました。創業前の私たちが二人ともこの場に参加させていただくことができたのは、関係者の皆さんのご厚意と幸運というほかありません。
競合企業が合同で開催するマッチング・イベントでは、真剣な協業検討にならないのではないかと思われる方もいるかもしれませんが、運営側の皆さんの徹底したご配慮もあって、むしろ個別企業の企業訪問よりも緊張感があったかもしれません。もちろん初回ですから参加者も運営側も手探りの部分も多々ありましたが、今年8月に行われる第2回には前回の倍となる20社のスタートアップと、日本から8社が集まることからも、皆さんの満足度が高いことは明らかだと思います。第2回の参加スタートアップ選定作業をU3イノベーションズがお手伝いさせていただくこととなり、数か月前から2週間ごとにミーティングを重ね、スタートアップ企業の事業の特徴や日本市場における可能性などについて、分析を重ねていますので、今年は前回にも増して思い入れも期待も高まっています!
詳細を語りだすと長くなるので上記にご紹介したJECのウェブサイトに譲りますが、JEC2018に参加して、欧州を中心にたくさんの魅力的なスタートアップがあることは重々認識したうえで、結論としては、私たちはまず日本発のスタートアップをメインのターゲットにすることに決めました。
その理由は、一つにはエネルギー事業は各国それぞれで、規制や制度設計がその国ごとに異なるため、ローカライズのコストや手間が相当かかるという現実です。欧州で通用するビジネスモデルが、日本ですぐ社会実装できるかと言えば全くそうではありません。日本側から参加される企業の皆さまには、そうしたチャレンジも当然認識されたうえでしょうし、日本市場だけのビジネスをお考えになっている訳ではないのだろうと思います。
より大きな理由は、JEC2018で出会ったスタートアップの方たちが、とにかく楽しそうだったことでした。財務状況を見ると必ずしも成功しているとは言えない企業の創業者も、自分たちの技術やサービスが社会に必要とされ、社会をより良くすることを信じて疑っていませんでした。彼らが楽しそうに将来像を語り続ける姿を見て、日本もこれからもっともっとこうした新しい力が伸びる社会になってほしいと思ったのです。
こうして、私たちの「日本のエネルギー産業」を豊かにするという目的を達するうえで、海外のスタートアップの方たちのお力を借りるという選択肢も十分に考えましたが、まずは日本発で頑張っているスタートアップの方たちに、日本のエネルギー市場で活躍していただくようご支援しようと決めました。将来的には彼らが日本から海外に出て活躍していただくことも応援したいと思っています。そういうサイクルを作ることが、日本社会全体を活気づけていくと確信しています。
8月に行われるJEC2019に向けて、日本からの参加企業の若手の方を中心に集まるJEC Youthが6月21日に開催されました。我々もお招きいただき、今後の日本のエネルギー市場の動向や、ビジネス創出において気を付けるべきポイントなどをプレゼンさせていただきました。これから2週間の間にチームごとに協業案を考え、7月5日に発表会をするとのこと。皆さんの目も真剣そのものでした。
担い手となる若い力は多くいます。日本のエネルギー市場の大転換、これから楽しみです!