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COP25参戦記―何をこんなにもめたのかー

スペイン・マドリッドで開催されていたCOP25に参加してきました。

今年も、正式な会期である金曜日を超えて日曜日までかかりました。毎年会期を延長して議論が行われるのは、経済と直結したこの問題での合意が難しいことの表れでもありますし、このCOPの世界独特の理由も影響しています。

実はこの国連気候変動枠組条約の締約国会議には、いわゆる「職業交渉官」がたくさんいます。国籍とは関係なく、欧州の環境NGOから転職で途上国の交渉官になる、なんていうこともよくある話なのです。そういう人たちは契約している国にもたらす利益を最大化しないと次の契約がなくなってしまいますので、そう簡単には折れないわけです。はたから見れば些末な事でも、徹底的にこだわるのは自分の職の確保につなげるためということも多いのです。

これまで、COPにまつわる記事をいくつか、News Picksのサイトや日経COMEMOなどにも寄稿しましたので、それらでもうお読みいただいた方の方が多いかもしれません。

現地から発信したあれこれを(一部ですが)下記に整理しますので、温暖化やエネルギー問題にご関心のある方にはぜひご覧いただければと思います。

<日経COMEMO>

小泉演説はなぜ批判されたのか-COP25参戦記-

「いつまでに」「どれくらい」より「どうやって」ーCOP25参戦記①-

<News Picks>

石炭まみれの安倍首相と「ステーキ毎日食べたい」小泉環境相はグレタさんの期待に応えられるか

小泉環境相「世界的な批判認識」 COPで演説、脱石炭表明できず

会期延長のCOP25 議長“合意に向け妥協点を”

小泉演説はなぜ批判されたのかーCOP25参戦記―

<国際環境経済研究所>

【動画】COP25参戦記:スペイン・マドリッドでCOP25開催中

【動画】COP25参戦記:グレタ・トウーンベリさんプレゼンテーション

【動画】COP25参戦記:大阪ガス株式会社 CSR・環境部長 津田恵さんに聞く 「欧州のエネルギー事業者との議論で考える、日本のエネルギー事業戦略」

【動画】COP25参戦記:千代田化工建設株式会社 水素チェーン事業推進部 池田修さんに聞く 「日本の水素戦略の展望」

【動画】COP25参戦記:経団連 国際環境戦略WG座長 手塚宏之さんに聞く 「イノベーションのカギはなにか」

<何をそんなにもめたのか>

今回のCOPの主な議論のテーマは、市場メカニズムについての詳細ルール(パリ協定6条)に関して合意を得ることでした。CO2を減らすなら、削減のためのコストが少ない国・地域・案件でやったほうが、同じコストでより多くのCO2削減できますので、そのための制度を作ろうとしているのです。

京都議定書の時代にも「京都メカニズム」と言われる仕組みがあり、途上国で削減したCO2をクレジット化し、先進国がそれを購入して自国の目標達成に使うことができました。日本政府や日本の企業は相当のコストを、この京都メカニズムに費やした訳です。そうやって日本は京都議定書第一約束期間の目標をちゃんと達成しました。(ちなみにカナダなどは、第一約束期間の目標達成が無理だとみると、枠組みから離脱しましたからね、いまカナダがPowering Past Coal Alliance(脱石炭同盟)をリードしている!と手放しで評価しているかた~、こういう過去もちゃんと見ましょうね~。)

しかしながら、パリ協定のもとでは、途上国も含めてすべての参加国が目標を掲げています。削減できたCO2を他国に移転する(売る)のであれば、自国の目標の達成には使えないようにしなければなりません、いわゆる「ダブルカウント」を防止しなければならないわけです。

また、実はブラジルは、京都議定書の下で得た大量のクレジットをパリ協定の枠組みに移管したいと希望し、各国の反対にあっています。「地球の肺」とも例えられるアマゾンを抱えるブラジルは、森林吸収により大量のCO2クレジットを保有しているので、これをパリ協定の自国の目標達成に使いたい!という訳です。それではブラジルはほとんど何もせずに目標達成になってしまうので、島しょ国やEUなどから反対されるという対立構造は去年に引き続き、今年も変わりませんでした。

日本が自発的に仲介役を買って出て、一時期妥協の可能性も見えたのですが、結果的には合意できないままに終わったことは既に皆さんご存知の通りです。

とはいえ、日本の小泉大臣に対して、閉会の時に議長が丁重な謝辞を述べました。特定国に対して議長が謝辞を述べるということは、とても珍しいことで、日本のメディアが言うように「小泉大臣が批判された」「日本は孤立している」というのが、いかに一面的な報道かがわかります。

今回のCOPでつくづく感じるのは、日本のメディアで報道されることと現場の乖離です。

これから少しずつ、そうした点も書いていきたいと思いますが、まずは帰朝報告まで。